診断を受けて、すぐに大きな病院に入院し、いろいろな検査をすることになった夫。彼には病名を告知せず、私一人の心に留めました。もちろん、小学2年生の息子にも言いませんでした。
癌と気づかない程、元気だった夫
母に電話をすると絶対泣いてしまう……
母には手紙で状況を伝えました。
1か月前にはフルマラソン、六甲縦走トレイルランと完走するぐらい元気だった夫。
入院する3か月前に受けた会社での健康診断でも、特に異常はなし。
だから、病魔がそこまで迫っていたとは、誰も気づきませんでした。
当時の携帯は電話をする機能くらい。
今の時代のように簡単に検索することはできませんでした。
だから私は図書館や本屋さんへ、食道癌の事を調べに行きました。
本に書かれている原因は、ほとんど当てはまりました。
- 飲酒:ウイスキーをロックで飲むのが好き
- たばこ:1日に2箱
- 辛いもの好き:LEEの20倍カレーなど大好き
- ストレス:毎晩の帰宅時間は日付が変わる頃
「もしかして、オレ、癌?」
ある日病室で彼に聞かれました。
「もしかして、俺、癌?」
病院の売店で見た週刊誌の記事を見て、そう思ったと言うのです。
とっさに言葉が出なかった私は、こう言う他ありませんでした。
「えっ?知らんよ。」
そのときは、本人には告知しないと、担当の医師と決めた方針でした。
告知は主治医から
その後、主治医に相談に行き、今後の手術や治療を考えると告知して、本人に理解し納得してもらう方がよいとの答えでした。
主治医から本人に伝えられました。
「先生、私は5年後生きてますか?」
「一緒に頑張りましょう」
私は帰りの車の中で思いっきり泣きました。
家では息子が待っているし、病室には彼がいる。
私が唯一泣ける場所は、この車の中だけだったのです。
当時の気持ち
当時、癌は恐ろしい病気で助からない病気だと思っていました。
1か月の間、自分だけが知っていて、彼にも息子にも悟られないようにすることが本当に辛かった。
告知をすることで、私は少しはホッとしました。
でも当事者の本人はどんなに辛かっただろう。
恐怖と不安に立ち向かってくれるだろうか。
これでよかったのだろうか……
私がしっかりしなくては。
いろんな思いが湧いてきました。
今は医療が進み、早期発見、早期治療で治る事も多くなっています。
でも、当時の私はこんな気持ちでいたのでした。