癌と診断されたのが12月。手術は1か月後の1月と決まりました。
病院ではよそゆきの顔だった親子
その年のお正月、外泊の許しを得て、久しぶりに父と子の触れ合いがありました。
病院へお見舞いに行くと、二人ともなぜか遠慮がち。
お互い本当の姿を出そうとせず、息子はいい子を前夫はいい父親を装っているようでした。
本当は、もっともっと父親に甘えたいと思うのですが、我慢しているように思えました。
家に帰ったとたん、うれしそうな顔をしてお父さんから離れない息子。
「凧あげしようか」
「うん!したい!」
3人で近くの川に行き、凧あげを楽しみました。
父子の後ろ姿を見ながら、私は心の中で祈っていました。
「どうか神様、このまま時を止めてください」
いよいよ手術当日
病院で14時間もの大手術を待つ間、近所の人に息子をお願いしていました。
食道を全部取り、周りのリンパ節も取り、胃の1/3を取り、その残りの胃で食物の新しい通路を作る、再建術でした。
手術は無事に終わりました。
麻酔がかかって、もうろうとしてICUで寝ている姿に、ほっとしました。
「よかった。生きていてくれた」
「腫瘍とその周辺のものは取りました。でも近くにリンパ節があり、完全ではありません。今後は放射線と抗がん剤治療が必要となります。」
ドクターに説明を受けているとき、強く思った事を覚えています。
「絶対にこの人は復活する。癌に勝つんだ。」